仕事レポート No.9

海の宿スリーハピネスオーナー 森 秀代さん

4月20日でオープン5周年を迎えた、スリーハピネスのオーナー森秀代さんからお話を伺いました。
内向的で人と話すことが苦手だったという秀代さんが、ひょんなことから宿を始め、「お客様と話せば話すほどいい人ばかりで、 自分自身の考え方も変わり、宿をやって本当によかったです」と、やさしい口調で話をしてくれました。

スリーハピネス オーナー 森 秀代さん
【 スリーハピネス オーナー 森 秀代さん 】

宿を始めたきっかけ

義母が40年近くやっていた食堂を閉じてしまい、そのままだった建物をリノベーションして、5年前から簡易宿泊施設「海の宿スリーハピネス」をやっています。


宿を始めたきっかけは、食堂を閉じて8年くらい経ってからでしょうか、島を訪れた方の「廃墟のようだ」という投稿を見て、「これはまずい!何とかしなければ!!」と思いました。県道沿いの目立つ場所で町のイメージもよくないだろうし、海に面している地下は誰でも入れるため安全面の心配もありました。

夫婦で何度も話し合った結果

私なりにいろいろ考え、義母がやっていたような食堂はできないけど、宿泊施設をやってみたいと主人に提案しました。
主人は、沖縄旅行で泊まったいくつかのゲストハウスの写真を見せながら、若い観光客をターゲットにしたゲストハウスをやりたいと。
一方私は、沖永良部島は沖縄のように観光客が多くなく、観光客相手だと経営が安定しないので出張客をターゲットにしたプライバシーが守られる個室がある宿泊施設をやりたいと。

なぜ、出張客をターゲットにしたかというと、義父が営んでいる建設業の事務をやりながら、車輌、資材関係の営業の出張員が島に多くいらしているのを目の当たりにしていました。この方々を取り込めたらと思いました。何よりも出張員はシーズン関係ありません。

二人の考え方が違っていたので、どの方向にするかを二人で何度も話し合いました。
最終的には、個室6部屋で共有のキッチンスペースがある今の形に落ち着きました。

【 共有のキッチンスペース 】

PRまで手が回らないままのプレオープン

開業資金は、日本政策金融公庫に相談をして事業計画書を提出し、融資を受けました。
工事費の比率から言うと、雨漏りや防水対策などの補修費が大部分でした。図面は主人が書き、内装工事は業者さんにイメージを伝えお願いしました。共有の洗面台は食堂時代の流し台にタイルを貼って使いました。
周りの人達に「いつまでやっているの!?」と言われるほど工事に日数を要しました。

共同洗面台
【 共同洗面台 】

気持ち的に余裕がなく、PRまで手が回りませんでした。PR方法もよくわからず、とりあえずブログを始めたり、ご近所さんに「宿をオープンします!」と挨拶周りをしました。プレオープンには、皆さんがお祝いに来てくれて嬉しかったです。

反省の連続

お客様第1号は、ファミリーでした。ドアを開けたお子さんが私の顔を見て一目散に逃げていったのを今でも鮮明に覚えています。衝撃でした。
話しかけづらかったのかな?きっと怖い顔をしていたんだろうな?と悩みました。反省することばかりでした。

【 フロントでお迎えの秀代さん 】

正直なことを言うと、フロントに座って建設業の事務をメインにやって、宿は片手間でできると思っていました。片手間なんてとんでもなく、フロントに座るということは、お客様と対話するということなんですよね。考えが甘かったです。

オープン2年くらいで生活リズムが安定

オープン後しばらくは、お客様も少なく、港の待合所に割引券を置いたり、宿泊のお客様にもどうしたらいいのかと相談しました。お客様にフェイスブックをやってみたらと言われ、やり方を教えてもらいフェイスブックを始めました。

住まいが宿から離れた所にあり、通ってくるのが大変というのもありました。3年前から住まいを宿の隣に移したら、生活リズムが安定して楽になりました。

稼働率は昨年65%でした。事業計画書には稼働率85%と身の程知らずの数字をあげていて、それがどれだけ大変なことか思い知りました。稼働率65%でも十分やっていけます。部屋数的にも適切だったのかもしれません。

【 海側の個室 】

お掃除はベテラン主婦の方にお願いして2人でやっています。オープンから3か月は私一人でやっていましたが、とても手が回らずママ友に探してもらいました。細やかな掃除のやり方をゼロから教えてもらい、勉強になります。

考え方、価値観に変化

自然な笑顔でお客様をお迎えするのに1年以上かかりました。頭で考えると躊躇してしまうことが、お客様とやり取りしているうちに、自然に会話ができるようになりました。
人が怖いというのがありましたが、それがなくなり、お客様と話せば話すほどいい人ばかりで、気がつくと人が好きになり、考え方も変わりました。
宿を始めたのは、子育てにもいい影響が出ていると思います。私自身も仕事を通して成長しているのかなと思っています。


PTAなど子どもの用事の時は、出かけますがそれ以外はほぼ宿にいます。仕事が生活の一部になっている感じです。
お客様に、イラストレーター、翻訳家、研究者などフリーランスの方が多く、組織に属さなくても島の役に立つ仕事があるということに気づきました。そのことを子ども達に伝えたいです。

【 宿から見える太平洋 】

フリーランスは大変だというイメージでしたが、お客様と実際に話をしてみると自由でゆったりしていて幸せそうです。宿を始めて、いろんなお客様と話すことができ、私自身の価値観が変わりました。

オープンから5周年

観光客も増えてきているので、宿の前のスペースを観光客同士の情報交換の場にできたらと考えています。昨年、試しに頂き物のフルーツトマトやパッションフルーツを数日置いてみたのですが、思っていたほどお客様がいらっしゃらず、入りにくい雰囲気だったのかなと。その反省を踏まえて、今年も夏ごろからやりたいと思っています。

4月20日で5周年になりました。嬉しいことにリピーター、さらには利用されたお客様からの紹介のお客様も増えてきました。ありがたいです。

ベトナム、韓国、フランス、スイスなど海外からのお客様も少しずつ増えてきました。
英語がまったくできないのでゼスチャーで済ませていますが、そのうち英語をやってみたいと思っています。聴覚障害のお客様もいらして、手話もできたらいいなと思っています。
宿の仕事を通してやりたいと思うことが出てきて、宿を始めて本当によかったと思っています。

【 フロントにあるお持ち帰りどうぞ!の貝殻 】

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