島の仕事レポート

南栄糖業株式会社 前田 和義さん

2017/06/28

南栄糖業株式会社 前田 和義さん

 

南栄糖業株式会社 前田 和義さん

南栄糖業株式会社 前田 和義さん

沖永良部島でさとうきびが栽培されたのは、約190年前といわれています。

昭和30年頃には、日本の大手商社が南西諸島における黒糖生産に乗り出し、奄美群島の島々に大型製糖工場が建設されました。

昭和37年、さとうきび集荷の混乱を抑えるために一島一社体制の行政指導を受け、和泊町の奄美興発株式会社と知名町の共和産商株式会社が合併して、南栄糖業株式会社が設立されました。

さとうきび畑と南栄糖業

さとうきび畑と南栄糖業

 

製糖工場

製糖工場

 

今年、創立54年を迎える南栄糖業株式会社の常務取締役 前田 和義さんからお話しを伺いました。
前田さんは、昭和55年に東京から沖永良部島の南栄糖業へ異動。
当時は、沖永良部台風の3年後でしたが、さとうきび生産量は10万トン程度を維持していました。

さとうきびの栽培面積が減少

昭和52年の沖永良部台風で壊滅的な被害を受けた農家は、生活の立て直しや台風被害で借り入れたお金の返済のために、さとうきび以外の様々な農作物を栽培するようになりました。
そのため、さとうきびの栽培面積は年々減少していきました。

平成9年には、生産量がピーク時の4分の1まで落ち込み、会社撤退の危機に陥ったのです。
撤退するか、継続するかの局面になった時に、和泊町、知名町の行政、議会、農業協同組合(現JAあまみ)、生産農家から強い継続要請がありました。

話し合いを重ね、最終的には、農林水産省の指導の下、弊社と地元で「さとうきびの増産に関する覚書」を取り交わし、存続が可能となりました。
両町行政、両町農業協同組合が株主に加わり、再スタートしたのです。

農家と会社が一体となった「農工一体」という考え方

紆余曲折ありましたが、さとうきびの収穫面積は、平成20年に12年ぶりとなる1,000ha台を回復し、その後も徐々に増加し、平成28年には昭和55年頃の収穫面積に戻ってきています。

生育したさとうきび

生育したさとうきび

 

さとうきびを作っている他の地域から、「なぜ、沖永良部島ではさとうきびの生産量が増えているのか!?」と注目されていて、農家と会社が車の両輪となって「農工一体」を実現している体系をみたいと、鹿児島や沖縄の関係者が先日、視察に見えました。

さとうきびの生産量が増えているのは、農家の皆さんがさとうきびの重要性を再認識して生産いただいているからだと思います。

農家と会社が一体となった「農工一体」という考え方に至ったのは、平成9年の会社撤退の危機を、会社、農家が一緒になって乗り越えたことが大きいと思います。

農家の高齢化対策として取り組んでいること

当地では、高齢化に向けて、収穫作業の機械化や農業共済の積極的加入を進めてきました。
収穫作業の機械化に関しては、昭和49年頃から、さとうきびの栽培作業の中で8割くらいかかっている収穫作業の労力の軽減化を図ってきました。

手作業で刈取られたさとうきび

手作業で刈取られたさとうきび

 

どういうことをやったかというと、脱葉機械、ハーベスター、植え付け機械を中心に研究、導入を行いました。その結果、現在、収穫時の機械化率は98%を超え、南西諸島において、最も機械化が進んだ島となりました。

ハーベスターでの刈取りの様子

ハーベスターでの刈取りの様子

 

また、昭和52年の沖永良部台風で農作物に大きな被害を受けた教訓から、農業共済加入率が約8割という高い加入率(他の島が3割~5割程度)となり、台風などの自然災害に遭った場合でもさとうきびの収穫見込み量の8割を保証するなど、農家の皆さんが安心してさとうきびを作れるという態勢ができたのです。

さとうきびはゼロ・エミッションを実現できる作物

さとうきびの大きな特徴は、砂糖を取り出すエネルギーをさとうきび自体が持っているということです。

さとうきびを絞った後のバガスが高いエネルギーを保有しているのです。
さとうきびから砂糖を作る工程において、蒸気と電力が必要となりますが、バガスの燃焼エネルギーですべてを賄うように製糖設備能力を設計しています。

製糖工場は、圧搾工程で発生するバガスが持つエネルギーを利用することで、製糖工程を完結させることができるのです。

さとうきびの搾りかす バガス

さとうきびの搾りかす バガス

 

さとうきびは、ゼロ・エミッションを実現できる作物なのです。

ゼロ・エミッションを実現するためには、圧搾量に基づいて必要な蒸気、電力を計算して作成するバランスシートが重要となります。
このバランスが崩れると、蒸気の場合は重油、電力の場合は買電電力が必要となり、環境負荷が増大するだけでなく、製造コストの上昇となってしまいます。

* ゼロ・エミッション・・・廃棄物を出さない循環型生産構造

精度の高い生産計画を立てるために

製糖を前にした毎年10月中旬、さとうきびの生産見込み量調査を行っています。

収穫予定のさとうきび畑の中から標準的な生育の畑を抽出して、さとうきびの伸び・茎の数・直径・重さを測ります。
調査したデータをもとに、事前に農家から申請のあった栽培面積を掛けてさとうきびの生産量を予測します。

青々と広がるさとうきび畑

青々と広がるさとうきび畑

 

農家の収穫計画や工場の操業計画にとって重要な数値であることから、かなり緻密に行います。そのため、ほぼ実績に近い数値をはじき出しています。

農作物を数値で把握するのは大変ですが、生育状況と糖度を測定機器で図り、一定のさとうきびの量からできる砂糖の量(歩留まり率)を予測し、会社としての採算、農家への配分予想、輸送船の事前手配などすべて計画的に行われます。

操業シーズンに入る前の11月中には、すべての計画について関係先の承認をもらいます。
いざ、操業が始まったら、機械はフル回転です。

トラブルもなく半年近く、24時間稼動できているのは、オフシーズンに徹底的なメンテナンス作業を行っているからです。
機械によっては、創業時から54年間使っているものも多くあります。

圧搾工程の様子

圧搾工程の様子

 

製品分離装置

製品分離装置

 

さとうきびは、台風襲来地帯の沖永良部島の農家にとっては、なくてはならない重要な基幹作物です。今後も、農家が安心してさとうきびづくりができる運営に努めていきます。

 

南栄糖業株式会社
〒891-9123 鹿児島県大島郡和泊町皆川891
TEL:0997-92-1165

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